天璽瑞宝トップ > 資料 > 県・県主一覧

県・県主一覧

名称 主な出典 令制遺称地
 大和    
春日県主 『紀』綏靖二年正月 大和国添上郡春日郷
もしくは大和国十市郡
猛田県主 『紀』神武二年二月甲辰朔乙巳  大和国十市郡
(『延喜式』神名帳に竹田神社)
もしくは大和国宇陀郡
添(層富・曽富)県主 『紀』神武即位前紀己未年二月壬辰朔辛亥
『続紀』天平神護元年二月甲子
『三代実録』貞観元年正月廿七日甲申
『録』大和国神別
『旧』神代本紀
『延喜式』神名帳
大和国添上郡・添下郡
山辺県主 『続紀』天平宝字二年八月庚子朔
『続紀』天平宝字三年五月壬午
『続紀』天平宝字五年正月癸巳
『三代実録』貞観元年正月廿七日甲申
『旧』天孫本紀尾張氏系譜六世孫段
『延喜式』神名帳
大和国山辺郡
十市県主 『紀』孝安二十六年二月己丑朔壬寅
『紀』孝霊二年二月丙辰朔丙寅
『記』孝霊段 
『三代実録』貞観元年正月廿七日甲申
『延喜式』神名帳
大和国十市郡
高市県主 『記』神代天安河宇気比段
『紀』天武元年七月壬子
『紀』天武十二年十月乙卯朔己未
『三代実録』貞観元年正月廿七日甲申
『録』和泉国神別
『延喜式』神名帳
大和国高市郡
磯城県主 『紀』神武二年二月甲辰朔乙巳
『紀』綏靖二年正月
『紀』安寧三年正月戊寅朔壬午
『紀』懿徳二年二月癸卯朔癸丑
『紀』孝昭二十九年正月甲辰朔丙午
『紀』孝安二十六年二月己丑朔壬寅
『紀』孝元即位前紀
『紀』天武十二年十月乙卯朔己未
『記』綏靖段
『記』安寧段
『記』懿徳段
『旧』天孫本紀物部氏系譜七世孫段
『延喜式』神名帳
大和国城上郡・城下郡
菟田県主 『紀』神武即位前紀戊午年六月乙未朔丁巳、八月甲午朔乙未
『伊勢国風土記』万葉集註釈巻第一
大和国宇陀郡
葛城県 『紀』推古三十二年十月癸卯朔
『三代実録』貞観元年正月廿七日甲申
『延喜式』神名帳
大和国葛上郡・葛下郡・忍海郡
久米県 『延喜式』神名帳  大和国高市郡
 河内    
三野県主 『紀』清寧即位前紀
『紀』天武十三年正月庚子
『延喜式』神名帳
河内国若江郡
紺口県主 『録』河内国皇別 河内国石川郡紺口郷
大県主 『録』河内国神別 河内国大県郡
『和名抄』 河内国河内郡英多郷 
志貴県主 『記』雄略段
『三代実録』貞観二年十一月十六日壬辰
『三代実録』貞観三年二月十六日庚申
『三代実録』貞観四年二月二十三日壬戌
『録』河内国皇別
『延喜式』神名帳
河内国志紀郡志紀郷
 和泉    
茅渟(珍)県主 『紀』崇神七年八月癸卯朔己酉
『紀』雄略十四年四月甲午朔
『紀』崇峻即位前紀
『続紀』天応元年三月戊辰
『続紀』天応元年六月己酉
『三代実録』元慶五年四月二十八日乙巳
『録』和泉国皇別
『霊異記』中巻「見鳥邪淫厭世修善縁第二」
和泉国
県主 『続後紀』承和三年二月戊寅
『録』和泉国皇別 
 
 摂津    
猪名県 『紀』仁徳三八年七月 摂津国河辺郡為奈郷
三嶋県主 『紀』安閑元年閏十二月己卯朔壬午
『続紀』神護景雲三年二月辛酉
『続紀』宝亀元年七月乙酉
『旧』天神本紀
摂津国島上郡・島下郡
 山城    
山代県主 『旧』天孫本紀物部氏系譜六世孫段   
鴨(賀茂)県主 『紀』神武二年二月乙巳
『続紀』宝亀十一年四月庚申
『後紀』延暦十六年二月癸酉
『後紀』大同四年十一月戊辰
『後紀』弘仁元年十一月戊午
『後紀』弘仁四年十一月庚午
『後紀』天長元年四月乙未
『続後紀』承和二年四月己亥
『続後紀』承和十一年十一月壬子
『続後紀』承和十五年二月辛亥
『文徳実録』仁寿元年四月戊午
『三代実録』貞観五年四月十五日丁未
『三代実録』貞観十六年八月丙子二十日
『三代実録』元慶八年四月三日癸巳
『旧』神代本紀
『旧』皇孫本紀
『古語拾遺』神代段
『録』山城国神別
『録』左京皇別下
『山城国風土記』本朝月令所引秦氏本系帳
山城国愛宕郡賀茂郷
栗隈県 『紀』仁徳三八年七月 山城国久世郡
 伊勢    
川俣県造 『続後紀』承和十三年二月壬申朔己夘
『皇太神宮儀式帳』
『倭姫命世記』活目入彦五十狭茅天皇十四年
『延喜式』神名帳「川俣神社」
『和名抄』「英太郷」
伊勢国鈴鹿郡
阿野県造 『皇太神宮儀式帳』
『倭姫命世記』活目入彦五十狭茅天皇十四年
『和名抄』「英太郷」
伊勢国安濃郡
市志県造 『皇太神宮儀式帳』
『倭姫命世記』活目入彦五十狭茅天皇十四年
伊勢国壱志郡
飯高県造 『続紀』天平十四年四月甲申
『皇太神宮儀式帳』
『倭姫命世記』活目入彦五十狭茅天皇二十二年
『和名抄』「英太郷」
伊勢国飯高郡
佐奈県造 『記』天孫降臨段
『皇太神宮儀式帳』
『倭姫命世記』活目入彦五十狭茅天皇二十二年
伊勢国多気郡
(『延喜式』神名帳に佐那神社)
度逢県 『紀』神功九年三月壬申朔
『伊勢国風土記』万葉緯所所引神名秘書
伊勢国度会郡
県造 『続紀』宝亀三年四月庚午
『三代実録』貞観九年九月十二日戊申
『三代実録』貞観十年十月二十八日戊子
 
 尾張    
中島県主 『賀茂神官鴨氏系図』  尾張国中島郡
丹羽(迩波)県主 『続後紀』承和八年四月乙巳
『旧』天孫本紀
尾張国丹羽郡
(『延喜式』神名帳に大県神社)
年魚市県 『尾張国熱田太神宮縁起』 尾張国愛知郡
島田上県・下県 『録』右京皇別下  尾張国海部郡島田郷
 遠江    
『和名抄』
『延喜式』神名帳「英多神社」
遠江国浜名郡英多郷 
 武蔵    
『和名抄』 武蔵国橘樹郡県守郷
 近江    
犬上県主 『録』未定雑姓大和国 近江国犬上郡 
 美濃    
鴨県主 『延喜式』神名帳
『旧』天神本紀
美濃国賀茂郡
美濃県主 『倭姫命世記』活目入彦五十狭茅天皇十年 美濃国
方県 『続後紀』嘉祥二年八月丁未
『和名抄』
美濃国方県郡方県郷
山県 『和名抄』 美濃国山県郡
 信濃    
『和名抄』
『延喜式』神名帳「英多神社」
信濃国小県郡・佐久郡
『和名抄』 信濃国埴科郡英多郷 
 越前    
坂井県 『釈日本紀』述義所引上宮記 越前国坂井郡
 加賀    
『和名抄』 加賀国加賀郡英多郷
 丹波    
丹波大県主 『記』開化段 丹波国丹波郡
『延喜式』神名帳「三県神社」 丹波国桑田郡
 但馬    
『延喜式』神名帳「県神社」 但馬国城崎郡
 出雲    
- 『延喜式』神名帳「県神社」 出雲国出雲郡
 備前    
上道県 『紀』応神二十二年九月庚寅 備前国上道郡
三野県 『紀』応神二十二年九月庚寅 備前国御野郡御野郷
藤野(磐梨)県 『後紀』延暦十八年二月乙未
『録』右京皇別下
備前国磐梨郡
 備中    
川嶋県 『紀』応神二十二年九月庚寅 備中国浅口郡
苑県 『紀』応神二十二年九月庚寅 備中国下道郡曽能郷
波区芸県 『紀』応神二十二年九月庚寅  
中県 『三代実録』貞観四年七月十日丁丑 備中国後月郡県主郷
 美作    
『和名抄』 美作国英多郡英多郷
 安芸    
『和名抄』 安芸国山県郡山県郷
 周防    
沙麼県主 『紀』神功摂政前紀十二月戊戌朔辛亥 周防国佐波郡佐波郷
 紀伊    
『和名抄』 紀伊国在田郡英多郷
 讃岐    
小屋県主 『霊異記』下巻「強非理以微債取多倍而現得悪死報縁 巻二十六」 讃岐国三木郡?
 阿波    
『延喜式』神名帳「御県神社」 阿波国勝浦郡
 伊予    
『和名抄』 伊予国野間郡英多郷
 筑前    
岡(塢舸)県主 『紀』仲哀八年正月己卯朔壬午
『筑紫国風土記』万葉集註釈巻第五
筑前国遠賀郡
伊都(逸都・怡土)県主 『紀』仲哀八年正月己卯朔壬午
『紀』神功摂政前紀仲哀九年九月庚午朔己卯
『釈日本紀』巻十述義六仲哀
『筑前国風土記』釈日本紀巻十一
『筑前国風土記』釈日本紀巻十
筑前国怡土郡
儺県 『紀』仲哀八年正月己亥 筑前国那珂郡
 筑後    
水沼県主 『紀』景行十八年七月丁酉
『住吉大社神代記』八神男八神女奉供本記
筑後国三潴郡
八女県 『紀』景行十八年七月丁酉 筑後国上妻郡・下妻郡
山門県 『紀』神功摂政前紀仲哀九年三月丙申 筑後国山門郡
上妻県 『筑後国風土記』釈日本紀巻十三 筑後国上妻郡
 肥前    
嶺県主 『紀』雄略十年九月乙酉朔戊子 肥前国三根郡・神崎郡
松浦(末羅)県 『紀』神功摂政前紀仲哀九年四月壬寅朔甲辰
『記』神功
『肥前国風土記』万葉集註釈巻第四
肥前国松浦郡
杵島県 『肥前国風土記』万葉集註釈巻第三 肥前国杵島郡
高来県 『紀』景行十八年六月辛酉朔癸亥 肥前国高来郡
佐嘉県主 『肥前国風土記』佐嘉郡 肥前国佐嘉郡
 肥後    
八代県 『紀』景行十八年五月壬辰朔 肥後国八代郡
熊県 『紀』景行十八年四月壬戌朔甲子
『肥後国風土記』万葉集註釈巻第三
肥後国球磨郡
阿蘇(閼宗)県 『筑紫風土記』釈日本紀巻十 肥後国阿蘇郡
 豊前    
長峡県 『紀』景行十二年九月甲子朔戊辰 豊前国企救郡長野郷?
上膳県 『筑後国風土記』釈日本紀巻十三 豊前国上毛郡
 豊後    
直入県 『紀』景行十二年十月 豊後国直入郡
 日向    
諸県

『紀』景行十八年三月
『紀』応神十一年是歳、十三年九月
『記』応神
『和名抄』

日向国諸県郡県田郷
子湯県 『紀』景行十七年三月戊戌朔己酉
『和名抄』「英多郷」
日向国児湯郡・臼杵郡
 大隈    
曽県主

『続紀』天平勝宝元年八月癸未
『薩摩国正税帳』天平八年

大隈国贈唹郡
 薩摩    
加士伎県主 『薩摩国正税帳』天平八年 薩摩国甑嶋郡?大隈国桑原郡?
 壱岐    
壱岐県主 『紀』顕宗三年二月丁巳朔
『旧』天神本紀
壱岐国
 対馬    
対馬県主 『紀』顕宗四月丙辰朔庚申
『記』神代天安河誓約段
『文徳実録』天安元年六月庚寅
『三代実録』天安二年十二月八日乙未
『旧』天神本紀
対馬国上県郡・下県郡

『紀』=日本書紀、『続紀』=続日本紀、『後紀』=日本後紀、『続後紀』=続日本後紀、『文徳実録』=日本文徳天皇実録、『三代実録』=日本三代実録、『記』=古事記、『録』=新撰姓氏録、『旧』=先代旧事本紀、『和名抄』=和名類聚抄、『霊異記』=日本霊異記、と略しました。

参考文献 :

新野直吉『国造と県主』志文堂
佐伯有清・高嶋弘志『国造・県主史料集』近藤出版社
原島礼二『日本古代王権の形成』校倉書房
上田正昭『日本古代国家成立史の研究』青木書店
国史大辞典編集委員会『国史大辞典』吉川弘文館
   
(あがた)は、地域支配のために置かれた組織、あるいは領域のひとつです。県を統括する首長に、県主(あがたぬし)・県造(あがたのみやつこ)があります。
上のように、関東以北では武蔵国の橘樹県の一例しか確認できず、国造・部民・ミヤケが全国的な分布を示すのとは対照的です。これら6世紀代に始まったとみられる他の制度より早く、王権が全国的な制度を行うだけの力を持っていなかった時期に始まったようで、5世紀にさかのぼる開始時期が推測できます。
設置をめぐる伝承に、天皇巡幸と関連して現われるものが多く、また『延喜式』の祝詞で倭の六県(高市・葛木・十市・志貴・山辺・曽布)が県からの生産物や労働力などを貢納奉仕すると述べられていることから、県は天皇の家政に直属して発展したものと見られます。
ただし、伊勢国にみられる県造には、伊勢神宮への奉仕が認められ、天皇に奉仕するものではありません。神宮の神と天皇とが同格に扱われる時代になってから置かれたもので、カバネ的な「造」の存在からも、国造制開始と同時期の継体欽明朝以降ということになるでしょう。
原島礼二氏は、県の分布と物部氏の分布の重なりなどに注目し、県は物部氏を介して設置されたものとする説を述べています。

《もどる》